2024/11/17【 関東大学対抗戦A 】vs明治大学 マッチレポート
関東大学対抗戦A 対明治大学戦
11月17日(日)・秩父宮ラグビー場
○帝京大学48-28明治大学●
《BRIEF REVIEW》
対抗戦第6戦は、昨シーズンの大学選手権決勝を戦った明治大学との一戦。今シーズンも春季交流大会では引き分け、夏の菅平での練習試合は3点差での勝利と、接戦を演じてきた相手だ。帝京としては、前節の敗戦を糧にどこまで成長できたかをしっかりと示したい。
開始直後、WTB生田、CTB上田の突破でチャンスを作るも、ミスがあり、ここは得点を取り切れない。しかし、接点で優位に立った帝京は、WTB日隈、FB小村らの好タックルもあり、再度、チャンスを作る。
6分、自陣でのラインアウトから展開。ラックから、SH李-FL青木-SO本橋(尭)と渡り、本橋が抜け出す。さらに、WTB生田にパスし、生田が長い距離を走り切って先制トライを奪う(7-0)。
その後も接点で圧力をかけ続ける帝京。スクラムが乱れてターンオーバーされ、ピンチになりかけるシーンもあるが、FL青木、CTB大町らが相手を止め、ボールを奪う。
14分にはラインアウトからFWで継続。ラックから、SH李-LOダウナカマカマと渡り、ダウナカマカマがトライ(14-0)。
このあとはピンチが続く。相手のキックしたボールが帝京の選手に当たり、そのまま相手にすっぽりと入る。走られるが、WTB日隈の好タックルで防ぐ。さらにペナルティなどでピンチとなるが、No.8グアイニ、PR森山、FB小村、WTB日隈、CTB大町らの好タックルで守る。
それでもピンチは続くが、SO本橋(尭)らの好タックルでターンオーバーし、CTB生田が前進。さらにFB小村のキックパスをWTB日隈がキャッチしてチャンスを作る。
23分、スクラムから継続。WTB日隈が前進。ラックから、SH李-FL青木と渡り、青木が前進してトライを奪う(21-0)。その後のキックオフからミスでピンチになるも、SH李、FL森元、CTB大町らが好タックル。ラックでFL森元がターンオーバーして防ぐ。
32分にスクラムからつながれ、トライを奪われるが(21-7)、直後の35分、FB小村のキックカウンターからチャンスを作る。小村が抜け出し、SH李-FB小村-CTB上田と渡り、上田が抜け出してトライ(26-7)。
その後、攻められるが、帝京は好タックルを連発してターンオーバー。PR平井がパスダミーから前方へキックし、チャンスを作る。40分、FB小村がキックカウンターからハイパントを蹴る。このボールがバウンドして、小村が自らキャッチ。ラックになるが、ラックからPR森山がボールアウトし、FL青木へパス。青木が抜け出してトライ。帝京が33-7とリードして前半を折り返した。
後半も開始直後から帝京が攻める。PR森山らの前進でチャンスを作る。4分、ラインアウトからFWでつなぐ。FL青木、LO本橋(拓)が前進。ラックから、SH李-LOダウナカマカマと渡り、ダウナカマカマが相手ディフェンスをハンドオフでかわして前進し、トライ(40-7)。
ここから攻められる時間帯となるも、PR森山の好タックルなどでなんとか防ぐ。しかし、9分、最後は個人技でもっていかれ、トライを許してしまう(40-14)。
このあたりから、一進一退の展開となる。14分、FKを得るとSO本橋(尭)のタップキックからつなぐ。FB小村-FL青木-FB小村と渡り、小村が抜け出してトライ(45-14)。しかし、19分には、ラインアウトからつながれ、トライを奪われてしまう(45-21)。
さらに一進一退が続く。攻められる時間帯でも、PR森山らの好タックルで防ぐ。37分、ゴール前でペナルティを得ると、SO本橋(尭)がPGを決める(48-21)。その後、ピンチのシーンも、SH赤迫のすばやい反応でターンオーバー。帝京は最後まで相手に圧力をかけ続ける。
終了間際の44分にラインアウトからモールを押し込まれてトライを許すが、ここでノーサイド。帝京が48-28で勝利した。
《COLUMN》
―― リーダーシップ ――
多くの集団スポーツのチームにはキャプテン(主将)がいます。チームをまとめ上げる上で非常に重要な役割を果たすことは言うまでもありません。
ここ十数年、帝京大学ラグビー部のキャプテンを見てきましたが、一人の例外もなく、全員必ず「どのようにリーダーシップを取ったらいいのか」という問いに悩み、迷い、苦しんでいました。特に春から夏、人によってはシーズンが深まっても明確な答えが見えず、悩み続けていることもありました。
学校の勉強のように正しい一つの答えがあるわけではないことが、この問いをさらに難しくしていたようです。
帝京の歴代キャプテンの多くはまず「プレーで引っ張る」ことを強く意識していたように思います。自分が率先していいプレーをする姿を見せれば、みんなもそれを目指してついてきてくれるだろうという考え方です。しかし、これは「男は背中で語る」「黙って俺についてこい」という、いわゆる「昭和型」のリーダーシップです。
昭和から平成になると、「黙って俺についてこい」と言って黙々と走ったものの、気が付いたら後ろには誰もいなかったということがさまざまな組織でよく起きるようになり、令和にもなると「黙って俺についてこい」の時点で組織全体にしらけた空気が流れ、もはや最初から誰もついてこない(あるいは、ついて行くフリだけして実際には従わない)という事態も見られるようになっていったようです(これは帝京での話ではなく、世の中全体での一般論です)。
今年度の青木キャプテンも春からいろいろと迷い、悩んでいたようです。彼が最も悩んでいたのは「チームへの目配り、気配りを意識しすぎるあまり、自分自身のプレーに集中できず、本来のパフォーマンスが出せなくなっている」ということでした。
チームに目配り、気配りすることは必要だが、それをしっかりやろうとすると自分のプレーに集中できない。自分のプレーにばかり集中すると、チームへの目配り、気配りが甘くなる(昭和型に陥りかねない)。一見すると二律背反で、両方を満たすのは無理なようにも見えます。
しかし、この試合に向けて青木キャプテンが出した答えは秀逸でした。
「しんどくなったら俺を見ろ。俺は常にハードワークしているから」
チームへの大きな気配りを見せつつ、自身のプレーに集中する。目配りについては「俺を見ろ」という形で各自に委任する。
言葉もタイミングもベストだと思います。おそらく、春シーズンにこの言葉を言っても、あまり響かなかったことでしょう。大一番での完敗を経験した今だからこそ、チーム全員に響くものになりました。
さらにこの言葉は、チームを鼓舞するのと同時に、青木キャプテン自身を鼓舞する言葉にもなっています。誰かがしんどくなって青木キャプテンを見た時、もし彼自身がハードワークしていなかったら、「なんだ、口だけじゃないか」となりかねません。青木キャプテンはこの言葉によって「常にハードワークし続ける義務」を自らに課したのです。
ここから帝京はさらに強くなります。そんな予感が確信に変わった一日でした。
(文/木村俊太・写真/和田八束)