2023/01/08【 大学選手権大会 決勝 】vs早稲田大学 マッチレポート
《試合経過》
【 前半 】
02分 【帝京大学】トライ 敵陣ゴール前連続攻撃から10高本が抜け出しトライ 10高本ゴール成功 7-0
12分 【早稲田大学】14トライ 12ゴール成功
17分 【早稲田大学】11トライ ゴール不成功
23分 【帝京大学】トライ 敵陣ゴール前連続攻撃から6青木がトライ 10高本ゴール成功 14-12
27分 【帝京大学】トライ 敵陣ラインアウトから8延原が抜けだしそのままトライ 10高本ゴール成功 21-12
40分 【帝京大学】トライ ターンオーバーしたボールを展開し、最後は11高本がトライ 10高本ゴール成功 28ー12
前半終了:帝京大学 28-12 早稲田大学
【 後半 】
03分 【早稲田大学】ペナルティーゴール ゴール成功 28-15
06分 【帝京大学】トライ 敵陣ゴール前連続攻撃から3上杉トライ ゴール不成功 33-15
10分 【帝京大学】トライ 連続攻撃から10高本が抜け出しそのままトライ 10高本ゴール成功 40-15
18分 【帝京大学】トライ 敵陣スクラムから7奥井がインターセプトしトライ 10高本ゴール成功 47-15
19分 【帝京大学】 1 髙井翔太 → 17 津村大志 , 4 本橋拓馬 → 19 ダアンジャロ・アスイ , 12 松山千大 → 22 五島源
24分 【帝京大学】トライ ラインアウトから8延原が抜け出し7奥井へ繋ぎ最後は19ダアンジャロがトライ 10高本ゴール成功 54-15
29分 【帝京大学】 2 江良颯 → 16 福井翔 , 3 上杉太郎 → 18 崔暢賢 , 5 江里口真弘 → 22 尹礼温
30分 【帝京大学】 敵陣連続攻撃から右に展開し14小村がトライ ゴール不成功 59-15
33分 【帝京大学】 9 李錦寿 → 21 岡本泰斉 , 15 山口泰輝 → 23 戒田慶都
35分 【帝京大学】トライ 敵陣ゴール前で6青木がこぼれ球を拾いそのまま抜け出しトライ 10高本ゴール成功 66-15
39分 【早稲田大学】トライ インターセプトしトライ ゴール成功 66-20
39分 【帝京大学】 7 奥井章仁 → 5 江里口真弘
40分 【帝京大学】トライ 敵陣でターンオーバーし10高本がキックパスし23戒田がキャッチしトライ 73-20
試合終了:帝京大学 73-20 早稲田大学
(試合速報担当:4年 湯浅宏太 3年 辺 純鍾、池上玲央)
《BRIEF REVIEW》
いよいよ迎えた大学選手権決勝。対戦相手は早稲田大学。春季大会、夏合宿での練習試合、対抗戦といずれも帝京が勝利している。しかし、準決勝後のコメントで松山千大キャプテンが「以前とはまったく別のチームと思って対戦したい」と述べたように、油断せず、気を緩めず、最後までしっかりとリスペクトして戦いたい。
試合開始直後、帝京はいきなりチャンスを迎える。キックオフのボールをNo.8延原がうまく処理して、CTB松山へパス。松山が前進し、ゴール前へ。ラックからSH李-FL青木-SO高本幹也と渡り、高本がディフェンスをかわしてトライ。帝京がノーホイッスル・トライで先制する(7-0)。
その後も帝京が攻めるが、ペナルティやミスもあり、逆にピンチとなる。11分にはスクラムから攻められてトライを奪われ、同点とされる(7-7)。さらに、FB山口が孤立した状態でタックルを受け、ピンチとなるが、ここは山口が強さを見せ、倒されずにタックルをはずして前進。しかし、キックチャージや反則などがあり、17分にはラインアウトから攻められ、逆転トライを許してしまう(7-12)。
それでも帝京はあわてず、自分たちのやるべきことに集中すると、ここから帝京優勢の時間帯となる。22分、キックカウンターから連続攻撃。CTB松山、No.8延原、HO江良が前進。ラックからSH李-FL青木と渡り、青木が飛び込んでトライ(14-12)。27分にはラインアウトから展開。ラックからSH李-SO高本幹也-No.8延原とつなぎ、延原が抜け出してトライ(21-12)。
自らのミスでピンチとなる場面もあるが、HO江良らの好タックルで防ぐ。
前半終了間際の40分には、相手のキックからのルーズボールをSH李がうまく拾ってWTB高本とむにパス。高本がハーフウェイ付近から前進し、ディフェンスをかわして走り切ってトライ。難しい位置からのゴールキックも決まり、28-12で前半を折り返した。
後半は突き放していきたいところだったが、3分にPGを決められ、28-15と13点差に迫られる。
しかし、ここから帝京が一気にゲームを支配する。6分、ラインアウト・モールからHO江良が持ち出し、連続攻撃。ラックからSH李-PR上杉と渡り、上杉が抜け出してトライ(33-15)。11分、スクラムからの連続攻撃。SO高本幹也が小さくキックを蹴り、自ら拾って前進。ディフェンスをかわして走り切ってトライ(40-15)。18分には、相手ボールのスクラムを押し込んでボールアウトを乱れさせる。FL青木が相手SHにプレッシャーをかけ、FL奥井がインターセプト。そのまま走り切ってトライ(47-15)。
ここからややペナルティが増えるが、帝京は集中力を切らさず、FL青木らの好タックルで守る。
24分、ラインアウトから連続攻撃。No.8延原、FL奥井が大きく前進、さらにFL青木、HO江良が前進。ラックからSH李-LOアスイと渡り、アスイがトライ(54-15)。点差が開いても帝京の集中力は途切れない。30分、スクラムから連続攻撃。ラックからSH李-CTB五島-SO高本(幹)-CTB二村-WTB小村と渡り、小村が走り切ってトライ(59-15)。
攻められても、安定したディフェンスを見せる。No.8延原の好タックル、FL奥井のジャッカルなどもあり、しっかりと守る。
35分、LOアスイが相手からボールをもぎ取り、ターンオーバーして前進。つかまって、ボールが乱れるが、FL青木がうまく拾って前進してトライ(66-15)。
39分にはチャンスの場面で、パス・インターセプトされ、失点するが、終了間際の40分には、LO尹のタックルからPR津村がジャッカルしてターンオーバー。前進し、ラックからSH岡本泰斉-SO高本幹也と渡り、高本が外側へキックパス。WTB戒田がキャッチしてトライ。ゴールも決まってノーサイド。帝京が73-20で勝利し、2年連続11回目の大学選手権優勝を決めた。
《COLUMN》
――「芯」が継承される強さ ――
73-20というスコアで、帝京が大学選手権優勝を決め、去年に続く連覇を成し遂げました。来シーズンは二度目の「三連覇」に挑むことになります。歴史をつないでいくことができるか。すでに今から楽しみで仕方がありません。
この日、帝京はユニホームの背中の部分、背番号の上のところに黒い喪章をつけて試合に臨みました。帝京ラグビー部の草創期を支え、部の礎を築いた増村昭策名誉顧問が1月3日に他界されたことへの弔意を示すものでした。
増村先生の訃報に関する質問は記者会見でも出ましたし、優勝祝賀会の場でも多くの方々のスピーチで触れられました。この日、スタンドで応援された帝京OBの方はバッグからそっと増村先生の遺影を取り出し、「今日は先生と一緒に応援し、先生と一緒に優勝を喜びました」と語ってくださいました。
増村先生は岩出雅之顧問を帝京ラグビー部監督に導いた方であり、また相馬朋和監督を帝京ラグビー部に誘った方でもあります。
相馬監督は増村先生のご逝去について尋ねられた記者会見で、こう述べています。
「私が帝京大学に入った1年生のときが岩出先生の1年目でしたが、高校生だった私を帝京大学に誘ってくださったのが増村昭策先生でした。私に一番最初にスクラムを教えてくださったのも、増村先生でした。その当時、(ラグビーをやるという意味では)すでにご高齢だったかと思いますが、私と一対一でスクラムを組んでくださり、首の使い方はこうなんだといったことを直接教えてくださいました。私も今、学生たちに同じように教えていますので、これはそうやってずっとつないでいかなければと思っています。」
増村先生は、帝京V9時代の中期頃まで、グラウンドに足を運ばれ、スクラム指導をされていました。つまり、部の草創期からV9時代まで帝京には増村スクラムが継承され続けていたわけです。
ラグビージャーナリストの藤島大さんもJスポーツの放送(準決勝)の中でこんなことをおっしゃっていました。
「岩出前監督就任以前、帝京は極端な展開ラグビーの時代がありました。その時代でも、スクラムには一貫した芯がありました。もちろん組み方そのものは変わっていますが、その芯の部分、スクラムを大事にする文化は今にもつながっていると感じます。」
藤島さんに直接お会いして確認する機会があったので、この話は増村先生のことではないかと尋ねたところ、「そうです」というお答えをいただきました。
もちろん、これはスクラムに限ったことではなく、増村先生から岩出先生を経て、相馬監督へと、何本ものさまざまな「芯」が現在までつながっています。
多くの方々から「帝京はなぜ強いのか」と聞かれます。この質問の意味は「毎年、メンバーが変わる大学ラグビーにおいて、帝京が常に強くあり続けられる理由は何か」ということだと思います。答えは一つではないでしょう。もちろん、岩出先生の存在の大きさは言うまでもありません。それに加えて、チームとして「強さの『芯』が継承されている」ことが非常に大きいのではないでしょうか。
その「芯」を創られた増村昭策先生。その「芯」を継承していくことで、帝京はこれからももっともっと強くなっていくに違いありません。
増村昭策先生のご冥福をお祈りいたします。
(文・木村俊太/写真・志賀由佳)