本研究室とQDレーザ社との共同研究成果が,Invstigative Ophthalmology & Visual Science 誌に掲載されました.
この研究は,マクスウェル光学系を利用した拡張現実 (augmented reality, AR) デバイスを使用し,実空間でAR映像を見たときの視覚応答として,ピント調節と瞳孔の反応を調査したものです.
マクスウェル光学系は理論上,ピント調節が起こらないとされていましたが,実際の使用環境での効果は不明でした.本研究では,ピント調節力が十分にある若年成人を対象として,マクスウェル光学系方式のデバイスでARのターゲットと様々な距離に置かれた実物のターゲットを交互に見て貰いました.
結果,ARのターゲットを見たときのピント調節と瞳孔の大きさは,実物のターゲットの距離に応じて変化することが判明しました.例えば,近距離の実物のターゲットに対応するARのターゲットを見た場合,遠距離のものと比べて調節反応が大きくなりました.
興味深いことに,ほとんどの研究参加者はARのターゲットが実物のターゲットよりも手前にあると感じましたが,実際のピント調節の大きさはそれとは一致しませんでした.
この研究は,マクスウェル光学系方式のARディスプレイが実際の使用環境では完全に調節反応を排除できないことを示しています.これは,ARデバイスの設計や眼の健康への影響を考える上で重要な知見となります.