私たちの研究室は,視覚を中心とした医学と工学の複合領域における研究を行い,眼科医療技術のデジタル化を目指しています.視能訓練士が中心となって研究を実施しており,臨床での気づきや,日頃の検査で生じた疑問を基にした視覚研究を実施していることが,他の研究室との差異です.
また,帝京大学医学部附属病院眼科学講座と連携して,臨床研究も実施しています.
眼球運動とは
眼の動き (眼球運動) は読書やスマートフォンの画面を見るなど,日常生活を送る上で欠かせない視機能です.もちろん,スポーツでもボールを見たり,相手選手を見たりと『何かを見る』ためには,眼を動かす必要があります.眼球運動は私たち人間が普段,無意識下に行っていますが,眼球運動に制限がかかると,日常生活を送ることが非常に不便になり,生活の質 (Qualoty Of Life, QOL) が低下します.
眼球運動検査のデジタル化
これまで,斜視の検査は,視能訓練士や医師が手で視標を動かし,患者さんの眼の動きを目視で判定していました.しかし,人が手動で行う方法は,検査する人の技量によって結果にばらつきが生じることが懸念されていました.そこで,我々の研究室では,眼球運動検査をデジタル化することを目標に,車の自動運転などで利用されている物体用の人工知能 (AI) に視標を認識させ,眼球運動をビデオカメラで記録する赤外線視線追跡装置 (video-oculography, VOG) と組み合わせた VOG-AI システムを開発しました.VOG-AI システムは 99.7% の確率で視標の位置を同定し (下図 A),眼球運動検査の結果を数値化することに成功しました (下図 B).