水晶と石英

今、国際鉱物学連合の鉱物リストには6000種類を超える鉱物が記載されています。
この中に石英(Quartz)は記載されていますが、水晶(Rock Crystal)は記載がありません。
一般的に「水晶」とは、石英という鉱物を宝石として扱う際の呼び方(=宝石名)になります。

ダイヤモンドのように鉱物名と宝石名が同じものもあれば、石英(鉱物名)と水晶(宝石名)のように異なるものもあります。
さらに石英は色によって紫水晶(アメシスト)、黒水晶(モリオン)、黄水晶(シトリン)など、様々な宝石名がつけられています。

それでは宝石と鉱物の違いは何なのでしょうか?
単純には私たちが(金銭的な)価値があると思うか、価値がないと思うかの違いです。
水晶の場合、綺麗な六角形をしているものや透明度が高い石英を呼ぶことが多いです。
しかし、価値の付け方は人それぞれですので、自分が価値があると思えば立派な宝石と言えるでしょう。

さらに話を掘り下げてみましょう。
同じ石英にもかかわらず不透明なものと透明なものがあるのはなぜでしょうか?
石英の不透明部分を顕微鏡で観察してみましょう(下写真) 。

写真のように、石英の不透明な部分には流体包有物と呼ばれるとても小さい液体や気体が入っています。
この液体のことを専門的には流体包有物と呼び、不透明の白い部分では1cm3あたり1万~1000万個もの流体包有物が入っています。
石英に入った光は流体包有物にぶつかると屈折や反射を繰り返し、結晶の反対側に届くことはありません。
光が真っすぐ結晶の反対側に通らないということは不透明になるということを意味しています。

身近な例として炭酸ジュースを思い浮かべてみましょう。

泡がたくさんある部分は白くなり、向こう側を見ることができません。
不透明な石英と透明な水晶の違いは、結晶の中に入っている流体包有物の量の違いということになります。

まとめると、「水晶と石英は鉱物としては同じもので、石英のうち美しく価値のあるものを水晶と呼ぶ」ということになります。

余談ですが、「水晶と石英の違いは物質が結晶化しているかどうかの違い」という説明がよく見られます。
しかし、結晶とは材料となる物質(原子)が規則正しく配列している状態を指す言葉です。
例外もありますが、基本的には固体の物質は結晶で、液体や気体の物質が結晶でないものになります。
つまり、水晶も石英もどちらも同様に固体の結晶で、結晶化しているか否かという違いはありません。