中東にシリアという国があります。
シリアでは、世界ではじめて農耕がはじまり、都市がうまれて文明がさかえ、さまざまな民族や宗教のひとびとが共存してきました。
日本人にもパルミラ遺跡は人気の観光地で、ダマスク・ローズの香水やアレッポの石けんなどが有名です。
シリアでは2011年、民主化をもとめるデモを独裁政権が弾圧したことから内戦がはじまります。
それから13年のあいだに60万人以上が亡くなり、1400万人以上が難民となりました。
もちろん観光客もこなくなり、伝統工芸の職人たちも、多くが故郷をはなれざるを得ませんでした。
そして2024年12月8日、ついに独裁政権が崩壊し、シリアは50年以上にわたる抑圧から解放されました。
国中が瓦礫の山となり、インフラはずたずたに破壊されていますが、シリアの人々はそこから新しい国をつくろうとしています。
この企画展では、螺鈿、寄木、シリア刺しゅう、アレッポ石けんという4つのシリア伝統工芸と、その作り手たちを紹介します。
かれらは難民となって全てを失いながらも、避難先でゼロから生活を立てなおし、伝統を守りつづけたばかりか、苦境の中で新しいアイデアを次々と生み出し、伝統工芸の可能性を広げています。