膝の前面や膝蓋骨(膝のお皿)の周りの痛みについて
日常生活で膝を捻った、繰り返しの動作で膝が痛くなった、スポーツ中の動作で膝を痛めた、
膝蓋下脂肪体炎、変形性膝関節症 など
これら膝前面の痛みの多くは「膝伸展機構」といわれる膝の伸ばすための一連の構造体の問題です。
膝を伸ばす、すなわち立つ、屈伸する、階段を上る、下りるなどの動作に直結する痛みの元になるものです。
スポーツにおいてはランニング、ジャンプなどに大きく影響します。
「膝伸展機構」とは太ももの前にある大腿四頭筋、膝蓋骨、膝蓋靭帯(膝蓋腱)、膝蓋腱がくっつく脛骨粗面(けいこつそめん)のラインを指します。
このうち、特に膝蓋骨の周辺は膝の角度がどんな位置にあっても大腿四頭筋の力がしっかりと脛骨に伝わるように働いている骨であり、日頃からみなさんが考えている以上にとても酷使されている部分なのです。
擦れすぎて大腿骨との摩擦が強くなると変形し、膝の痛みの引き金になります。
膝蓋骨の動きが悪くなり、周囲に炎症を起こすようになると膝の前面に痛みが出てきます。また膝が曲がったまま伸びなくなったり、自分でいくら大腿四頭筋をほぐしても緊張が取れなくなったりします。
そうなるとますます膝蓋骨を酷使する力が強くなり、慢性的に膝伸展機構にストレスをかけ続けることになります。
高齢者では膝蓋骨の変形や関節を包む膜の炎症が起こり、青壮年では膝蓋靭帯(膝蓋腱)へのストレスが高まると膝蓋腱炎(膝蓋靭帯炎・ジャンパー膝)となり、成長過程の小学生〜高校生までの間ではオスグッド・シュラッター病(膝の成長痛)を起こすようになります。
また膝蓋骨の下にある「膝蓋下脂肪体」という脂肪のクッション部分が炎症を起こして強い痛みを出す場合もあります。
炎症の強い症例では小学生でも膝が曲げられなくなるほど痛みを伴うこともあるのです。
以上のように、なんとか歩けるが走れない、屈伸が痛む、立ち上がりや階段が辛いなど、膝の踏ん張りが効かないような症状をお持ちの方は、「膝伸展機構」に問題を起こしている可能性があります。
改善方法
高齢者であっても今まで変形しているせいでもう曲がらない・伸ばせないとお考えだった方が、膝伸展機構の炎症を抑え、動きを滑らかにすることでスッと膝の動きが改善するケースも多くあります。
膝蓋骨の動きを改善することで、関節内部で炎症を起こしている関節包の動きが滑らかになるためです。
さらに膝関節の可動域を改善した上で、お膝に負担をかけない動かし方を指導させていただきます。
変形性膝関節症について
上述のように変形性膝関節症には
脛骨大腿関節症と膝蓋大腿関節症の2つがあります。
変形はどちらか一方だけに起こっているわけではありませんが、
もっともお困りの痛みを引き起こしているのがどちらの関節なのかによってアプローチの方法は変わります。
膝蓋大腿関節症については、上述の「膝伸展機構」の問題を解決することが重要です。また日頃の動かし方を改善することで再発予防となります。
脛骨大腿関節症における最大の治療目標は、
関節内部の変形をいかに悪化させないか、
そして関節内部の軟骨をいかにすり減らさずに保てるか、ということになります。
そのためには関節の一部(日本人の場合の多くは内側)だけに強く荷重がかかり、膝の炎症が起こるような状況から抜け出すことが大切です。
改善方法
膝を完全に伸ばせるようにすることが特に重要です。前面の膝蓋骨の動きの改善、膝蓋骨の周囲、膝裏で固まってしまった周辺組織の柔軟性の回復を積極的に行います。膝が伸びる事で初めて膝の踏ん張りも効くようになります。
意外に軟骨がすり減り関節の変形が進んでいても、上述の「膝伸展機構の安定」さえ改善できると、不思議にお膝の痛みは落ち着きやすくなります。
「いまの痛みをとにかく取りたい!」といった訴えに対してはこれで十分なのかもしれません。
しかし、当院では痛みが軽減するだけで十分とは考えません。それは、今の痛みが取れるだけでなく、今後何十年間という時間を快適に過ごせるようにするための「膝の守り方」を知っていただきたいからです。
人は必ず老いていきます。それは誰にも止められません。であるからこそ、膝の老化を出来るだけ遅らせる努力というものを常に行う必要があるのです。
当院では膝関節のみならず、股関節、足関節、背骨まで目を配り、生活動作の中で膝の負担が増すような状況が見つかれば、それを改善させるアプローチも合わせて行います。
キーワードは「省エネ動作」。日々強い負担にさらされれば関節の老化を早めます。同じ動作でも軽い負担ですむならば老化を遅らせることができるのです。
省エネの動作とはどんなものか?それを知っていただき、これからの長い人生をご自身の足で歩んでいっていただきたいというのが当院の願いです。
コラム:サプリメントについて
軟骨がすり減るのを予防しようとグルコサミンなどのサプリメントを飲まれている方もおられるかと思います。
しかし、いまのところサプリメントによるお膝の変形改善や予防の効果を調べた研究では、全て「効果なし」との結論が出ております。
しかしプラセボ効果といって、お砂糖をお薬だと信じて飲むと病気が治ってしまう患者様もいらっしゃるのも事実です。
当院では、頭ごなしにサプリメントはなんでもダメだというつもりはございません。
効果の検証を患者様毎にしてみていただくことをお勧めしております。
まずは1ヶ月飲んでみて効果を試してみる。効果がありそうなら、もう1ヶ月飲んでみる。効果が持続しているようなら、あえて1ヶ月飲まないようにしてみる。
そこで効果が無くなるようなら、そのサプリメントが自分に合っているとご判断されてもよろしいのではないでしょうか。
一番良くない事は、効かないと思いながらもむやみに飲み続けることです。成分や内容の確認は必要であり、あやしいものは控えるようにしましょう。
膝のスポーツ障害について
(膝蓋腱炎(ジャンパー膝)、オスグッド・シュラッター病、腸脛靭帯炎)
膝蓋腱炎(ジャンパー膝)について
ジャンプを繰り返すスポーツ選手が
膝蓋骨下の膝蓋腱付近に運動痛を起こすものです。
膝蓋骨の上で大腿四頭筋が付着する部分が損傷する場合もあります。
病態は膝蓋骨に付着する膝蓋腱の微細な断裂や炎症です。
膝の屈曲角度が強い状況でのジャンプで特に、膝蓋骨や膝蓋腱に強い牽引力が働いて損傷されます。
意外に体の硬い選手よりも柔らかい選手に多く現れやすいのも特徴です。
改善方法
軽度の損傷であれば、一定期間の運動抑制と膝蓋腱や膝蓋骨周辺への手技療法で改善します。
筋肉のストレッチやマッサージだけでは足りないことも多く、損傷した膝蓋腱や膝蓋骨が周辺の組織と癒着した部分を剥がすような手技を行うと効果が得られやすいです。
また、再発を防止するため、ジャンプ動作中の膝の負担を軽減すべく、股関節、足関節からのジャンプ力を強化できるようなフォーム修正を試みることもあります。
重度の損傷では膝蓋腱が断裂する場合もあります。
その場合は長期間痛みに悩む選手もいます。適切に施術しても痛みが引かない場合はMRI検査などを受診していただくべく、整形外科をご紹介させていただいております。
正確な診察は適切な治療のもとです。
時間はかかるかもしれませんが、最速の回復にむけて積極的にお手伝いさせていただきます。
オスグッド・シュラッター病について
思春期に起こる膝蓋腱遠位の骨付着部である
脛骨粗面(けいこつそめん)の障害です。
膝伸展機構に成長期に強い負荷がかかることによって発生します。
膝を伸ばす大腿四頭筋が硬い子供に多く発生しやすいと言われています。痛みとともに脛骨の上部に熱感が生じ、時間の経過とともに脛骨粗面が前に出っ張ってきます。
膝を曲げることもできなくなるほど強く痛みが出る場合もあります。
オスグッド・シュラッター病が成長期の子供に起こるのは、成長段階の子供には脛骨粗面下に骨が成長する部分である成長軟骨が残っているためです。
この成長軟骨は牽引力に弱く、筋力によって膝蓋腱が脛骨粗面を引っ張るために、軟骨が徐々に剥がれてくることで炎症を起こします。骨が出っ張ってくるのは、剥がれた隙間を埋めようと新しい骨ができるためです。
改善方法
一般的な施術は、大腿四頭筋のストレッチやマッサージと脛骨粗面への温熱療法や電気療法でしょう。
これで改善が見込めれば良いのですが、案外長期間痛みに悩むお子様を多く見受けます。
当院ではこの他、膝蓋骨の動きを改善することで、関節内部で炎症を起こす関節包の動きが滑らかになるようアプローチしていきます。
また、この症例に悩むお子様は、膝を90°に曲げられてしまうと途端に膝を伸ばす力が出せなくなる特徴があります。
この場合は膝関節の可動域を改善した上で股関節周辺にアプローチをかけ股関節と膝関節が同時に力を発揮できるように致します。
お尻にある大臀筋(だいでんきん)という筋肉は、股関節の前面外側にある大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)とともに腸脛靭帯という太ももの外側にある腱を使って膝を伸ばす働きを持っています。
人間の大臀筋はゴリラのそれよりも大きく強力な力を発揮します。
ゴリラは短い距離なら2本足でも歩くことができますが、人間のように足を真っ直ぐにして歩くことはできません。
これは大臀筋の働きが弱いためだと考えられています。そのような強力なサポート筋を使わない手はありません。
膝を曲げられてしまうと膝を伸ばす力が出なくなってしまう患者様の多くはこの股関節からのサポートが上手に働いていません。
股関節を使って膝を伸ばすというのはこの機構を復活させるということです。これにより脛骨粗面にかかる負担を軽減させながらパフォーマンスを徐々に高めていきます。
腸脛靭帯炎(ランナー膝)について
上述の大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)、大臀筋(だいでんきん)からつながる腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)が膝の外側で大腿骨と接触しこすれることによって痛みを起こします。
これには中臀筋も関わっているという報告もあります。
多くの場合、股関節周辺の筋肉が固くなり、腸脛靭帯がピンと張りすぎてこすれる環境を作り出しています。
痛みによって膝の屈伸や荷重ができなくなります。
腸脛靭帯炎を繰り返す選手は体重のバランスが外に逃げやすいという特徴があります。
左右に重心がブレすぎるので体の外側の筋肉で支える力が余計に必要になっています。
また走行中、膝が内側に入る癖があると、その都度、腸脛靭帯が緊張してバランスを取ろうとしてしまいます。
改善方法
腸脛靭帯を固くしている股関節周辺の筋肉を柔らかくするため、ストレッチやマッサージを行います。
また、膝が内側に入る癖の原因を探して改善に導きます。
さらに、膝、股関節周辺の筋肉のうち、大臀筋や大腿筋膜張筋と同じ働きをする筋肉の活動を高めるエクササイズを行います。
痛みが長引く、もしくは再発する場合には運動中の重心が外にぶれないように体幹トレーニングを指導致します。
膝周辺のおケガについて
(靭帯損傷(側副靭帯損傷、前十字靭帯損傷、他)、半月板損傷など)
内側側副靭帯損傷について
内側側副靭帯(ないそくそくふくじんたい)は外側側副靭帯(がいそくそくふくじんたい)に比べ、損傷頻度の高い靭帯です。
これはスポーツ活動中の動きに膝が足に対して内側に入る動きが多いためです。
これをKnee-in , Toe-out(ニーイン、トゥーアウト)といいます。その結果として内側の靭帯を伸ばしやすい状況が多く発生します。
ここからさらに膝に捻れが加わると、膝内部の前十字靭帯や半月板を損傷することもあります。
改善方法
軽度の靭帯損傷や半月板損傷であれば、一定期間の固定を行い、靭帯や半月板の修復を促します。
手術が必要なケースであれば、提携している膝専門医へ責任を持ってご紹介をさせていただきます。
スポーツ中のケガというものは相手との接触によるもの(接触型損傷)がありますので、これについては仕方のないケースもあります。しかし、相手との接触でなくご自身が行った動作によってケガをしてしまった(非接触型損傷)のであれば、それはご自身の動作に問題がある可能性が高まります。
この場合はケガの修復が済んだのちに再発を防止するため、上述のKnee-in , Toe-outにならないような動作改善が必要になります。これには膝だけでなく、股関節・足関節・体幹の強化が必要です。
当院ではレッドコードという特別なトレーニング器具を使用し、各関節単体の強化ではなく、全身の連鎖運動までも強化しております。
運動中の動作は癖になっていることが多く、これを改善しないと同じケガを再発させることも少なくありません。またケガを恐れてかばうように動くことでパフォーマンスを損ねている選手も見受けます。
ケガを心配せずに競技に集中するためにも動作の改善は重要なのです。
前十字靭帯損傷について
前十字靭帯損傷はスポーツ中に膝に過度の捻れが生じて発生します。これにも接触型と非接触型があります。
前十字靭帯損傷の多くは、断裂を起こしていることが多く、その後の膝不安定性により競技に大きな支障をきたすことから手術を行うケースが多くあります。重度の側副靭帯損傷や半月板損傷についても同様です。
当院では提携している近隣の膝専門医にご紹介させていただき、手術後のアフターケアを任せていただいておりますのでご安心ください。
特に非接触型での前十字靭帯損傷を起こした場合は、手術後のリハビリがとても大切です。必ず動き方に問題があります。
それに気づけることができると、ケガをする前よりも体の使い方が上手になり、逆にパフォーマンスが上がる場合もあったりするほどです。
「ケガをする前よりも強く、しなやかな身体へ」
これを目指すのが当院の方針です。ぜひお手伝いをさせてください。
〜当院で施術できる
代表的な怪我、疾患〜
保険適応内
(1ヶ月以内の間に発生した突然の痛み・ケガ・交通事故または業務災害・労災)
日常生活で膝を捻った、繰り返しの動作で膝が痛くなった、スポーツ中の動作で膝を痛めた、靭帯損傷(側副靭帯損傷、十字靭帯損傷ほか)、半月板損傷、膝蓋腱炎(ジャンパー膝)、オスグッド・シュラッター病、腸脛靭帯炎(ランナー膝)、膝蓋下脂肪体炎、膝蓋骨骨折、膝蓋骨脱臼 など
※過去に変形性膝関節症と診断された方でも、最近新たに動作中の痛みがあらわれた場合には保険適応が可能な場合もあります。
保険適応外
(長期にわたる原因の無い痛みやシビレ、また重だるさ)
特に最近新たに痛めた原因のない変形性膝関節症、痛みを伴わない筋の疲労感など
※思わぬことが原因となり変形した膝に痛みが出る場合もございます。
保険が適応できるかどうかは初診時によくお話を聞かせていただいてから判断させていただきます。
当院の施術について
〜どんなテクニックを使うのか以上に、
どこを施術すべきかがが重要だと考えます〜
当院の施術は主に、手で行う7つの手技療法と正しい体の使い方を身につける運動療法をお体の状態に合わせて選択して行います。
それらに電気をあてたり体を温めたりなどの物理療法を掛け合わせていきます。
痛みを伴う施術は行いません。
患者様一人ひとりの体の反応を見ながら、最適な力でソフトに施術を行います。
当院では、
評価(どこが悪くて痛んでいるのか)が最も重要と考えており、
施術(どんな施術テクニックを使うのか?)はその先にあるものと考えています。
これは診察と施術の時間配分のことではなく、重要度のことです。
なぜなら適切な場所を適切な順番で施術をしないと
痛みはよくなっていかないからです。
初診の際にはもちろんのこと、通院中の経過観察においても症状の変化を注意深く観察させていただき、この施術方針が正しいのか、方針を転換する必要があるのかを日々検討していきます。
「これをやれば何でも治る!」などというテクニックは世の中にありません。
だからこそ、常に患者様のお話をよく伺い、動きをよく観察し、症状の経過を一緒に追いかけ、最善の施術、そして生活習慣に合わせた アドバイスを一人一人に合わせて作る必要があります。
我々は自分が何者であり、患者様に何が提供できるのかを理解している者でありたいと考えております。
当院は帝京大学付属の接骨院ですので、患者様の痛み改善を最優先に考えています。
我々が得意な範囲は我々にお任せいただき、我々でなく医師やその他の医療従事者が得意とする分野については、そちらを受診することをお勧めすることが患者様にとって最善であると考えております。ですから初診の時点で、他の専門医療機関での治療の方が適していると判断させていただく場合もございます。
その際は患者様のご希望をよくお伺いし、他医への適切な受診の方法などにつきましても責任持ってご案内させていただきます。